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レビューに必要な違和感アンテナ

技術ドキュメントのレビューは、技術がわかれば誰でもできる仕事だと思われがちです。しかし実際の現場では、技術力だけでは足りない場面に何度も出くわします。フォントの混在、係り受けの曖昧な一文、見出しレベルの飛びなど、こうした技術力以外の問題に気づけるかどうかも、レビューにおいて重要な要素となります。本記事では、問題となる違和感をキャッチするためのアンテナについて筆者の考えを整理してみます。

なぜ技術以外の問題に気づけないのか

技術観点以外の指摘でよく見かけるものの1つに、フォント種類やサイズの違いがあります。「ある段落だけ別のフォントになっている/同じ段落でサイズの統一感がない。」こうした不揃いは、コピペの積み重ね、版の違いなどから生じることが多く、作成者本人は気づいていないケースがほとんどです。このような指摘をすると、おおむね「言われてみた後に再度自分でも見て、誤っていたことに気づきました」と返ってきます。

なぜ指摘できるレビュアーには見えて、作成時のセルフレビューや他のレビュアーには見えないのでしょうか。多くの場合、それぞれの担当者はそれぞれの段階できちんと確認をしていると思います。

ただ、「何かおかしい」と感じ取る、いわゆる違和感アンテナとでも呼ぶであろうものの感度に違いがあり気づけなかったのだと筆者は考えています。

アンテナが捉える3つの領域

違和感アンテナが働くのは、フォントやサイズだけではありません。技術的な正しさとは別に注目すべき領域は、おおむね次の3つに分かれます。

  • 視覚:フォント種類・サイズの不統一、色使いなどデザインに関する領域です。
  • 文法:修飾関係が曖昧な一文、「の」の連続書き、接続詞の不適切な使いなど。一文に情報を詰め込みすぎると読みにくさも増します。たとえば「システムの設定変更の影響範囲の確認の手順」のように「の」が続くと、何が何を修飾しているのか追いにくくなります。
  • 構造:見出しレベルの飛び。大見出しの次がいきなり小見出しになるなど、章構成のレベル感がずれているケースです。

いずれも技術的な正しさとは別の話ですが、読み手の理解やドキュメントの品質に直結します。ところが、多くのレビュアーはこれらを見落とします。なぜでしょうか。

レビューにおける違和感アンテナの働き

フォントの違い、係り受けの曖昧さ、見出しレベルのずれ。領域は異なりますが、いずれも文章を読み、デザインを視て、理解しようとした瞬間に頭の中で違和感が生じるかどうかが問われます。

違和感が生じたとき、アンテナがうまく働いていれば、そこで立ち止まり、何がおかしいのかを特定します。一方、違和感の信号を意識に上げず読み進めてしまえば、指摘にはつながりません。レビューにおける見落としは、これらの違和感アンテナに関する処理のどこかがうまく機能しないことで生じると考えています。

違和感に気づけない理由① 感度(アンテナが育っていない)

では、なぜうまく機能しないのか。ひとつは、違和感アンテナの感度が十分に育っていないことです。実際の現場では、レビュー業務に関する訓練や育成よりも実務における技術力が重視される傾向にあります。そのため、フォントの統一や係り受けの明確さをチェックするアンテナ感度が低くなりがちです。

違和感をキャッチする感度は、生まれつきの才能だけで決まるものではありません。間違い探しのように2つの状態を見比べて違いを探してみたり、普段目にする様々なもののデザインや配色の使われ方の意味を考えてみたりできます。こうした思考訓練を普段の生活に取り入れることで、アンテナ感度を育てることは十分に可能だと考えます。

違和感に気づけない理由② 向き(アンテナが技術側に向いている)

見落としの背景には、感度とは別に、アンテナの向きもあります。レビュアーが追いかける問いが仕様の正しさやロジックの飛躍に固定されていると、体裁や表現への違和感は拾いにくくなります。意味が通じればよい、読めばわかるという許容基準が働けば、修飾関係の曖昧さや「の」の連続書きは、そもそも確認対象に入りません。

また、現場では『本質を先に、体裁は後回しに』という声もよく聞きます。前回のコラム(No.001)でも触れたように、修飾関係の曖昧さを指摘しても「細かい指摘は後回しでお願いします」と返されることがあります。一度きりの事情であれば別として、こうした優先順位のプレッシャーが続くと、レビュアーは技術側だけを見る向きを選びやすくなります。

その結果、違和感の信号は届いていても、優先順位の低い情報として処理され、意識に上げられず流されてしまいます。言われてみてようやく気づく、という反応は、感度がゼロというより、アンテナの向きが技術側に寄りすぎている状態の表れとも言えるのかもしれません。

違和感に気づけない理由③ ノイズ(世の中・組織が違和感を鈍らせる)

見落としには、個人の感度や向きとは別に、周囲の環境がアンテナを鈍らせるノイズもあります。このノイズは、視覚と国語表現では性質が異なります。

視覚面では、普段目にする商業デザインや広告などです。これらの世界ではフォントの混在やサイズの違いが意図的に使われることも珍しくありません。日常にそうしたものに多く触れていると、フォントやサイズが統一されているべき、という感覚がなかなか育ちにくくなります。

国語表現や文法面でも、似たような傾向があると感じています。近年、業務のテキストコミュニケーションはメールからチャットへ移り、話し言葉に近い気軽なやり取りが増えました。

また、Zoom などのリモート会議ツールが普及したことで、複雑で分かりにくい内容はテキストで整理しきらずとも、会議で直接話して解決できるという流れも生まれています。この流れは生産性向上や効率性の面では優れている一方、複雑なことを正確に文章化する機会そのものが、業務の中で減っているとも言えるのではないでしょうか。

テクノロジー(AI)が担える部分

ここまで見てきたように、視覚・文法・構造の違和感は、感度・向き・環境の影響を受けやすい領域です。技術力以外の面でもレビュースキルが高いメンバーがいなければ、見落としが起きがちになります。一方で、フォントの不統一や表記揺れだけでなく、係り受けの曖昧さ、見出しレベルのずれ、章構成の不整合などは、AI が検出しやすい領域だと考えています。

こうしたチェックを AI に任せれば、レビュアーはこれまで通り技術的な妥当性や仕様の整合性に注力しつつ、体裁や国語表現まわりの品質も底上げできます。アンテナの向きを無理に変えようとするのではなく、視覚・文法・構造の違和感を AI というテクノロジーでうまく仕組み化することでカバーできると考えています。

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