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レビューに活用できるガイドライン

前回のコラム(No.002)では、レビューで問題を感じ取る「違和感アンテナ」について整理しました。アンテナの感度も大切ですが、その土台を支える知識を備えることも同じくらい重要です。本記事では、どの分野でも共通して必要になる「分かりやすいドキュメントを作成するエッセンス」について参考になる情報をお伝えします。

2つのガイドライン

今回紹介する参考文献は、『公用文作成の考え方(文化庁)』と、『在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン(出入国在留管理庁/文化庁)』です。いずれもビジネス文書にフォーカスしたものではありませんが、分かりやすいドキュメントを作成する上で役立つエッセンスが多く含まれています。

『公用文作成の考え方』は政府の公用文向けの手引ですが、その中でも『解説・広報等』は、特別な専門知識を持たない人にも読みやすい書き方を工夫する対象として位置づけられています。表記の原則、用語、読み手とのコミュニケーションとしての文書作成など、表記と文体の基準が整理されています。

『在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン』は、タイトルだけを見ると外国人向けドキュメント用に感じますが、分かりやすいドキュメントを作成する、という観点ではこちらも役に立つエッセンスが含まれています。

■使い分け例

  • 『公用文作成の考え方』:表記揺れや符号の統一、専門用語・外来語の扱いなど。
  • 『やさしい日本語ガイドライン』:情報の取捨選択、短い文、言い換え、箇条書きなど。

次のセクションではそれぞれのガイドラインから有用と思われるものを一部抜粋して紹介しますが、どちらのガイドラインも無料公開されていますので、詳細は本記事末尾にあるリンクURLから是非参照してみてください。

①表記(『公用文作成の考え方』より)

『公用文作成の考え方』ではビジネスの現場でも迷いやすい書き方について、たくさんのルールが示されています。たとえば次のようなものです。

  • 外来語で語末が -er、-or、-arなどに当たるものは、語末に長音符号を付ける。

    修正前コンピュータ(computer)

    修正後コンピューター(computer)

    ※過去のJIS規格(2019年以前)では、「3 文字以上の語は語末の長音を省く」という扱いもありましたが現在は廃止されています。

  • 漢字より仮名の方が読みやすい語は、仮名で書く。

    修正前

    修正後など  ※「とう」と読む場合は「等」を利用する

    修正前

    修正後くらい

    修正前〜(し)て良い

    修正後よい

こうした迷いどころが現場でのドキュメント作成ガイドやレビューガイドに整理されていると、レビュー指摘も「筆者の好み」ではなく、根拠のある基準として、納得感のある指摘をレビューイにも伝えやすくなります。

②符号(『公用文作成の考え方』より)

『公用文作成の考え方』では、句読点や括弧など符号の使い方も整理されています。ビジネス文書でも、括弧内の句点や強調のための括弧、疑問符・感嘆符の要否は現場ごとに揺れやすいところです。

  • 括弧の中で文が終わる場合には句点(。)を打つ。

    (以下「基本計画」という。)/「決める。」と発言した。

  • 【 】(隅付き括弧)は、項目を示したり、強調すべき点を目立たせたりする。

    【会場】文部科学省講堂/【取扱注意】

  • 必要に応じて「?」「!」を用いる。

    ○○法が改正されたのを知っていますか?/もう発表されているのですか?

    みんなで遊びに来てください!/来月20 日、開催!

符号は小さく見えがちですが、括弧内の句点や強調の付け方、疑問符・感嘆符の要否が揃っているかどうかで、文書全体の読みやすさは大きく変わります。

③やさしい言い換え(『やさしい日本語ガイドライン』より)

『やさしい日本語ガイドライン』では、読み手が文の意味を取り違えにくい言い方への書き換えが整理されています。読み手が理解する上で負荷が高くなるような表現を知らず知らずのうちに使っていたりするのではないでしょうか。

  • 二重否定の表現は使わない。

    修正前利用できないことはない

    修正後利用できる

  • 受身は使わない。

    修正前アプリログはメーカー機能により取得される

    修正後メーカー機能ではアプリログを取得する

誰が何をするのかが一文で見える言い方に直すと、読み間違いが減り、レビューでも具体的な修正方針として伝えやすくなります。

組織のガイドラインとして活用する

組織独自のスタイルガイドがない、または存在しているが形骸化しているような現場では、上記2つのガイドラインから取捨選択したルールをガイドラインとして活用することも十分可能だと考えています。また今回紹介している文献は出入国在留管理庁や文化庁などから公的に発表されているものであり、情報ソースとしての信頼性も高く、組織内でのコンセンサスを取るのもある程度容易なのではないでしょうか。

テクノロジー(AI)が担える部分

拠り所となるガイドラインを用意できたとしても、それを実務レベルに昇華させるには、個人の努力だけでは足りません。組織全体での意識向上や教育の取り組みが不可欠です。ただし、その効果が出るまでには時間がかかり、すぐに成果を求めるのは現実的ではありません。

一方で、AIや検索拡張生成(RAG)といったテクノロジーを使えば、ガイドラインを参照資料として組み込んだAIレビュアーを作り上げることが可能です。人間のレビュアーは仕様の妥当性や文脈判断に注力しつつ、ガイドラインに沿った一次チェックをAIに任せる。このようなAI駆動型のレビュープロセスは今後主流になるのではないでしょうか。

参考文献

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